第53回 メトホルミンによる乳酸アシドーシスはなぜ起こるの?
Tags:GooCo 2023-08-25
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引き続き、副作用機序別分類の具体例をご紹介していきます。
“副作用の起こる発生機序 3つの分類”薬理作用・薬物過敏症・薬物毒性のどれに分類されるのか?どのような事に活用できるか?具体的に紹介していきます!
今回は、メトホルミンによる乳酸アシドーシス(重大な副作用)についてご紹介します。
まずは、結論から!メトホルミンによる乳酸アシドーシスは、【薬理作用による副作用】です。
ビグアナイド系経口血糖降下剤であるメトホルミンは、インスリン抵抗性を改善する薬です。AMPキナーゼを活性化し、
①肝臓で糖新生を抑制
②骨格筋や、脂肪細胞での糖のとりこみを促進
③小腸からの食事中の糖吸収を抑制
①~③の結果、血糖値を改善します。
肝臓での糖新生では、乳酸がビリルビン酸に変換されて糖新生(グルコース合成)に利用されます。
メトホルミンは糖新生を抑制するので乳酸が分解されず、結果、血液中の乳酸が増加し、血液が酸性に傾く現象が起きます。これが、乳酸アシドーシスです。
乳酸アシドーシスは、胃腸症状(悪心、嘔吐、腹痛、下痢等)、倦怠感、筋肉痛などの初期症状から始まり、過呼吸、脱水、低血圧、低体温、昏睡などの症状へと進行していきます。乳酸アシドーシスは致死率の高い疾患です。
【服薬指導/フォローアップのポイント】
☑腎機能低下者に注意
⇒メトホルミンは腎排泄型薬剤なので腎機能が低下している患者さんでは血中濃度が高くなり乳酸アシドーシスを起こしやすくなります。
☑脱水に注意!
乳酸アシドーシスは脱水時に起こりやすいです。
⇒シックデイの患者、利尿剤、SGLT2阻害薬を服用している患者さんは要注意です。
☑患者さんへの事前説明・確認を!
①胃腸障害
乳酸アシドーシスによる胃腸症状は、ビグアナイド系薬剤の投与開始初期によく認められる副作用である胃腸症状との区別が難しいとされています。通常の副作用の場合は軽度で一過性であり、一時的な減量、休薬により症状は回復することが多いようですが、症状がひどい場合や継続する場合は注意が必要です。
②CTやX線検査などで用いられるヨード造影剤について
腎機能が低下することで乳酸アシドーシスが現れやすくなるといわれています。
そのため、検査前はメトホルミン投与を一時的に中止し、ヨード造影剤投与後48 時間も投与を再開しないこととなっています。
③アルコール摂取
過度のアルコール摂取は、肝臓における乳酸の代謝が低下します。また、脱水状態を来すことがあるので避けるよう事前に伝えておきましょう。
④その他、リスク因子
その他、肝機能障害、低酸素血症を伴いやすい状態、感染症、高齢者等もリスク因子です。
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